化学工学とケミカルエンジニア

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ケミカルエンジニアの仕事

化学工学といっても高校の科目にもないし、漠とした印象しか持っていないであろう。化学工学コ−スを卒業するとどのような仕事をしていくことになるかは諸君の関心事であり、この点をもう少しクリアにするために化学工学がどうして生まれてきたか、その後どう発展してきたか、そこでケミカルエンジニアリングがどのような仕事をしてきたか、将来どのような仕事をしようとしているかを簡単に述べてみたい。

化学工学のはじまりは100年余り前に遡る。それまでは化学変化による有用物質の生産は小規模でおこなわれてきたが、産業の発展とともに大規模生産をする化学工業が要請されるようになった。同時にその学問的ベ−スが必要になり、それが化学工学として誕生した。化学工業は、肥料、染料から石炭化学工業、石油化学工業へと進み、それらの生産活動に化学工学は大きな貢献をしてきた。例えば初期の化学工学で確立された単位操作がある。化学工業で用いられる装置およびその操作は、生産する物質の種類によらず共通するものが多い。そこで共通する装置・操作を学問的・技術的に確立し、それを礎にして各種化学工業の設計・生産をする普遍的手法を産み出した。もう一つの例はシステムエンジニアリングである。化学工業は原料から製品まで複雑な経路を経ておこなわれている。これは、より効率的により能率的に製品を得るためである。個々の装置の性能だけでなく、ト−タルとして最適な経路は何かを見つけるための手法がシステムエンジニアリングである。

最近では、新素材やバイオや情報などの新しい分野が生まれ、地球環境やエネルギ−などの社会的問題が生じ、これまで培ってきた化学工学的手法をさらにポリッシュアップして、それらの課題に化学工学者が取り組んでいる。物質変化を伴うプロセスを扱うこと、総合的に物事を解決することは、化学工学者の得意とするところである。化学工学者の活動範囲は、これら化学工学的手法と化学工学的能力を活かし、単に化学工業だけでなく他の 産業にまで広がってきている。さらに、企業の技術的マネ−ジメントや流通システムのエンジニアとしての期待も大きい。

ケミカルエンジニアに要求される能力

上述のように化学工学者は、誕生期に要求された化学工業の生産を支えるエンジニアというのに加えて、化学工学的手法を活かした多くの仕事に携わっている。それを遂行するために、化学工学者に要求される能力は主に二つある。一つは「総合的判断能力」である。各要素技術を知った上で、それらを有機的に結合して全体として有効な生産プロセスを構築する能力である。木を見て森を見ないと化学工学者は務まらないのである。もう一つは「対象変化対応能力」である。化学工学者に与えられる対象は、過去の歴史が物語っているように、日々変化していく。これに対して柔軟に対応し、新たな課題に挑戦していく意気ごみやそれを解決していく能力が必要である。