「1999年度夏の学校」報告書
 岡崎


1999年8月25日から9月18日、私の過ごした25日間の中で一番の収穫は外国人と真面目な話しをしたことだ。(その内容は以下の“ドイツ人の魂”、“スキル”に記す。)これはホームステイ中にホストスチューデントのシュテファン・バット(以下バトス)とその友人オリバーとの飲みの席で経験できたことだった。しかも、日本語を使わず(使えずやむなく?)こんな真面目な話をするなんて、普通の海外旅行では味わえない経験だろう。

さらに、もう少し広く言うならホームステイで過ごした時間が最も忘れがたい。バトスの母は彼女の手料理が私たち(白井くんも一緒だったので)日本人の口に合うかどうか非常に気になっていたらしく、私がちょっとオーバーな表情で“Good!”って言ったら、ものすごい安心した様子で大きなため息を吐きながら胸をなで下ろしていた。あの時の彼女の顔は今でも覚えている。実際、彼女の作ってくれた料理がドイツで一番美味かった。バトスの父は学校の先生をやっている人らしくおそらくは厳しい人なのだろうが、その性格は息子に似て(見た目も)とても愉快でひょうきんな人だ。たくさんのボディランゲージとわずかに共有しているドイツ単語で、言葉の通じない私たちをおおいに笑わせてくれた。彼と私たちのコミュニケーションは言葉の壁をすでに乗り越えていた。しかし、彼が話しの終わりにキメ台詞を言ってウインクをするのだが、そんな時どんな顔をしたら良いか私にはわからなかった。また、バトスの友人には“日本人(外国人)に会って話しをしたい”と思っている人が大勢いるらしい。同時に自分の周りにはそのような人がほとんどいないことに気づき少しがっかりした。そもそも外国の人と友達になりたいと思ってもその勇気がなかったり、話しをしようと思ってもそのチカラ(語学力)がなかったりする人がほとんどだ。

以上が1999夏の学校に参加した私が一番に伝えたいことの一部です。そして以下に私がその他に感じたことや経験したことをレポートします。

−ドイツ人の魂−
 ドイツ人は東西間、南北間での仲が悪いらしい。実際、北部の人は南部の人を“バーバリアン(野蛮人)”と呼ぶという噂を聞いた。これは長い歴史の中で幾度となく繰り返されてきた国家の統一と分裂によるものらしい。特に近年ベルリンの壁が崩壊してようやく一つになった東西間の隔たりは酷く、年配の人ほどその傾向が強い。(東西が統一されてまだ数年、今まで外国だった人達といきなり仲良くしろと言われても急には無理なのか?)
しかし、バトスの友人オリバーいわく、“俺の親や年寄りの言ってることもよく分かる。でも、こんな考え方をしてたんじゃ何も変わらない。国が一つになっても心に壁を作ったままじゃぁ、この国はちっとも良くならない。自分の子供や次の世代のためにも、これからは地域間の格差をなくし、みんなで一つになって新しい世界を開くべきだ。そして、それが俺達若い世代の役割だ。” 正直、この話を聞いた時なんて立派なやつなんだって思った。愛国心が強く、現実を見つめそこから逃げていない。主張はするが、人の意見に耳を傾けることもできる。自分より数倍できた人間だと感じた。ドイツ人は若い世代でもこのくらいしっかりした考えを持っている人が多い。

−スキル−
“あなたが何か仕事を立ち上げようとする時、集団で始めますか?それとも個人で始めますか?”日本人ならたぶんグループで始めようとする人が多いだろう。しかし、ドイツでは違うらしい。考えてみれば、ドイツの学生は専門分野以外でも広い知識を持ち、高い能力を身に付けている。機械を専攻している人が妙に電気系の話しに詳しかったり、それでいて芸術的なインテリアを自作したりと様々なスキルを持っている。さらに大学にいる学生達は英語をあたりまえの様に使っている。コンピュータールームでウロウロしていた私を助けようとドイツ語で話しかけてきた学生が、私が英語しか話せないとわかると即座に英語に切り換えて話しかけてきた。こういうバックグラウンドがあるからこそ、一人で仕事を興そうをいう考えも生まれるのだろうか。

−日本人は柔軟?−
皆さんご存知の“Coca-Cola”このロゴの頭には日本なら“enjoy”って付いていますよね。ところが、これがドイツだと“Trink”(ドイツ語で飲む)ってなっている。どうして日本だと英語(“enjoy”)で日本語(“すっきり”とか“たのしー”とか)じゃないんでしょう。ってことがきっかけで、いろいろ考えてみたら日本には様々な言語が氾濫している。(良く言えば通用できている?)さらに、食事もそう。ほとんどの日本人が一日に一回は外国の食事を摂っていませんか?朝、昼、夕と三食純粋な日本食を食べている人はそんなにいないのでは。このように考えると日本人てすごく柔軟な人種に思えました。普段目にする文字や口にする食物が自分の国だけに固執していない。それに比べてドイツの硬いこと硬いこと。朝食と夕食が同じメニューって、バラエティーを好む私には耐えられません。(これはゲストハウスでの話で、ホームステイでそんな事はありませんでした。)
 しかし、まあ日本の教育水準が高いとか、ただ単に国が豊かで贅沢なだけとかって考えることもできますね。それに、つい最近まで社会主義の国だったし。ずいぶん一方的な意見になちゃいましたがせっかく感じたことなので報告してみました。

−What do you do in your free time?−
 日本にはたくさんあるのにドイツでは見られなかったものにカラオケとレンタルビデオ屋があります。そもそもドイツの人は余暇を自然の中(湖とか山とか)でのんびり過ごす人が多いようです。もちろんドイツ人も趣味をもってそれに時間を使う人もいますが・・・。この辺が文化の違いなのでしょうか?それにもう一つ、本屋に行っても漫画がものすごく少なかったです。しまいにゃ、日本の漫画のドイツ語版がたくさんありましたし。(ちなみにこれ、少しお土産にしました。)あと、娯楽施設はボーリングとビリヤードがほとんどなのではないでしょうか?余暇の使い方という点で大きなカルチャーショックを受けました。

最後に・・・
以上、随分くだけた報告書になってしまいましたが、私の感じたこと経験したことを書いてみました。あの25日間は楽しいことも少し嫌なこともいろいろありましたがトータルしてみると、やっぱり120%以上楽しかったです。このようなチャンスを絶対逃すべきじゃないと断言できます。 今回、引率していただいた先生方と一緒に言ったみんな、さらに陰でたくさんの仕事をしていただいた佐藤先生やその他の先生方およびスタッフの皆様に深く感謝いたします。